
トイレ 水漏れを検証してみる
服を収納するクローゼットをちょっと大きめに作るなり、納戸に仏壇などを入れて、そういった泣きの場にするなり、とにかく、蛍光灯で照らし出されない暗がりが欲しい。
一方、生活の必需品である食材やさまざまなものたちにも、同様の隠れ家が必要だ。
なんのことかと思われるかもしれないが、届いたばかり、買ってきたばかりのタマネギやジャガイモなどの食材を、ちょっと置く場所。
さらに、急なお客さんがきたとき、子どもたちが散らかした遊具や学用品を押し込める隠し場所のことだ。
我が家では、キッチンはYの規格品を入れたのだが、人造大理石の天板を特注で伸ばしてもらって、その下を、そういった緊急避難スペースとして確保した。
さらに、左図のように手前に引いて使える簡易デスクと引き出しを付けてもらって、ちょっとした書き物なら、キッチン仕事のすぐ脇でできるよう工夫した。
ただし、とにかく収納を増やすべしとはいわない。
収納は、あればあっただけモノが増えていく。
なければないなりに、むやみに買ったり、もらったりしなくなる。
また、リサイクルにまわしたり、人にあげたりを常に考えるようにもなる。
新鮮ないただきものが宅配便で届いて、それをストックするスペースがなければ、隣家におすそ分けして新鮮なうちに食べてもらおうという気も起こる。
だから、収納が少ないこともまた、コミュニケーションを生みだすキッカケになる。
宅配便で届いたビールやワインも、土曜に捨てなければならないリサイクル用のダンボールも、ここが一時避難所として機能している。
男と女は別々の家に住んでいる。
いや、決して別居や離婚の話ではない。
「階段」の位置が居ごこちを決める我が家には10年間、階段がなかった。
父が公務員だった関係で、生まれてからずっと公務員住宅でのアパート暮らし。
小さいころは友達の一戸建ての家に遊びに行くと、玄関近くにある階段に異様な憧れを抱いた。
「上に行ってはダメょ、お兄ちゃんが勉強してるから」などと、その家のお母さんに諭されると、かえって謎めいた階上の空間に夢がふくらみ、スキを見て、のぞきに行って怒られたりした。
一人暮らしを始めてから結婚して子どもができるまではマンションに住んだから、私がついに階段をゲットしたのは、一戸建ての建て売り住宅を購入して、生まれたばかりの長男とともに引っ越した15歳の夏のことだ。
以来、玄関脇から過段で2階に到達する、幅わずか刃、の小さな階段を昇ったり降りたりすることが、私の新しい日課になった。
幼いころからの記憶が作用するからだろうか、朝、着替えをするために階段を駆け上がるほんの2〜3秒の瞬間に、私の体にエネルギーが充電されるように感じるときがある。
風水では階段は気の通り道というが、その位置が家の上下の関係を決めることに加えて、どのように上がり、どのように下りてくるかが、家族の関係に及ぼす影響も大きい。
建て付けが悪かったり、防音が効いていないせいもあるのだが、逆に1階まで響くお父さんの大きな足音は、子どもたちにある種の儀礼的な緊張感と生活のリズムといったものを感じさせていたように思う。
もっとも、伝い歩きができるようになって大喜びで階段を昇っていった長男が、ちょっと目を離したすきに一気に8段ほど転げ落ち、玄関のたたきに打ちつけられたこともあった。
建て売り住宅だったころの我が家では、朝食をとる1階のダイニングには、私が一番あとに降りていくことが多かった。
3人の幼い子どもたちに「はい、みんな、おはようございま−す」とあいさつはなかったのだが、以来階段の昇り口と降り口の両方に、しばらくベビーゲートを付けていた。
打ちどころが悪いと亡くなってしまう赤ちゃんもいること、お年寄りの自宅での事故のトップが階段だということは、あとから知った。
新しく家を建てるときも、基本設計の段階で、階段の位置は最後まで争点になった。
最初私は、案のような、玄関を入ってすぐ緩やかなスロープをまつすぐに上がってゆく階段をイメージして、上下階の間取りもそれに従って設計した。
私が見積もりを取った2つのハウスメーカーと2つの工務店も、対案を示すことなくともに支持したために、この案は4カ月ほど、私の頭の中を疑いもなく占拠した。
ところがある日、日常家にいる妻の生活動線をチェックしているうちに問題点が浮かび上がった。
案では「食事の用意をしながら洗濯機をまわし、洗い終わった頃合を見計らって洗濯物を2階に運びベランダに干す」という、子どものいる家庭にあってはほとんど毎日、ときには日に2度もある大事な行動が、非常にやりにくいことが判明したのだ。
そこで案の登場である。
この案だと妻の動きはシンプルで、2階には台所からストレートに上がっていけることになる。
案男の私が当初描いた間取り。
玄関を入ってすぐに階段がある家にいる時間が最も長い妻の動線を配慮した間取りだから夫婦は、「夫と妻」というよりは、「階段を1日2〜3回しか昇り降りしない人と、日常頻繁に昇り降りする人」の組み合わせだと考えたほうがよさそうだ。
しかも朝食時に、あとから降りてくる父親の気配が伝わるという、我が家の伝統も継承される。
実際にここに示した動線の長さを測ってみると、妻の動く距離は案から案にすることで4割ほど短くなる。
会社に行っている日は、私の在宅時間は寝る時間を除いておよそ5時間、妻の場合は短くても3時間、長ければ私の3倍の咽時間は家にいて仕事をしている。
勘のいい読者にはもうおわかりだと思うが、私はやはり自分の家の設計に際して、子どものころからのいい知れぬ階段という異界へのコンプレックスを持ち込んでしまった。
お客様の目で階段の位置を設定し、そこをまつすぐに昇るイメージに酔っていた。
実際、外から来るお客様の目には、案の階段はより美しく映るかもしれない。
もっともその緩やかなスロープに、昼間妻が落としていった洗濯物の靴下が落ちていないという条件付きでの話だがI。
しかも一体、2階にも案内するようなお客様が、月に何人訪れるだろう。
基本設計を固めていく途上での夫と妻との対話の例を、さらに示そう。
夫は常に客人を意識し、妻はその夫の非日常さに、日常さでもって答えてゆく。
そして、多くは妻に軍配があがる。
「駐車場は、最近、クルマ2台分が常識みたいだけど。
お客さんがクルマで来ることもあるでしょう」「いらないんじゃない。
イザとなったら駅前の100円パーキング使えばいいし。
自分のうちの駐車場の目の前にちょっと置くくらいなら誰も通報しないでしょう。
ほんとにもう一台分必要になったら、近くの駐車場をいまみたいに借りればいいもの」「屋上を作って、バルコニーから螺旋階段で上がることもできるけどねえ。
夏はビアホール。
冬男は、主人というよりも客人の眼で、自分の家をとらえている。
階段から家全体をイメージしたり、ふだんは使いもしないリビングルームの豪華なソファから設計を考えたり、やがて納戸になり果てる書斎から場所とりを始めたり.・・・。
これに対して、たいていの主婦は、キッチンという戦場からはるかに現実的にものを見ている。
もちろん、なかには、自分が一番リラックスできる寝室や浴室からの視線で、家全体を見渡している女性もいるかもしれない。
「1年に何回昇るかしら。
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